在宅ワークの疲れを癒す。ストレス解消に効くアロマの選び方

在宅ワークの疲れを癒す。ストレス解消に効くアロマの選び方

「在宅ワークを始めてから、肩こりや眼精疲労がひどくなった」
「デスクワークが続くと、ストレスが溜まって集中できない」
「リフレッシュしたいけど、外に出る時間がない...」

2024年度、日本の雇用型テレワーク実施率は24.6%に達し、約4人に1人が在宅ワークを経験する時代になりました。働き方の自由度が高まった一方で、新たな健康課題も浮き彫りになっています。

実は、肩こりの有病率は72.5%、目の疲れは63.7%、ストレスを日常的に感じている人は78.2%にも上ります(日本リカバリー協会調査)。特に在宅ワークでは、通勤という「切り替えの時間」がなく、オンオフの境界が曖昧になることで、心身の疲労が蓄積しやすいのです。

この記事では、科学的研究に基づいた、在宅ワーク・デスクワークのストレス解消に効果的なアロマ(精油)の選び方と実践的な使い方をご紹介します。

1. 在宅ワーク・デスクワークの疲れの実態

在宅ワーカーの3大悩み

日本リカバリー協会が実施した全国10万人調査(2021年)によれば、在宅ワーカーが抱える健康課題は以下の通りです。

症状 有病率 特に多い年代
肩こり・首の痛み 72.5% 30〜40代(75.3%)
目の疲れ 63.7% 全年代
だるさ・疲労感 60.1% 全年代
ストレス 78.2% 全年代

特に注目すべきは、座位時間が7時間以上になると症状を自覚する人が1.33倍に増加するという調査結果。長時間のデスクワークが身体に与える影響の大きさが数値で示されています。

業務効率への深刻な影響

佐藤製薬の2012年調査では、肩こり・腰痛に悩む労働者の業務効率が平均34.7%低下することが明らかになっています。つまり、本来8時間でできる仕事が、12時間以上かかる計算です。

さらに、明治安田厚生事業団の研究では、テレワーク頻度が高いほど体力が低下し、腰痛や関節痛などの身体症状の訴えが多い傾向が確認されました。

⚠️ VDT作業ガイドライン(厚生労働省)

厚生労働省は「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」で、1日4時間以上パソコンを使用する労働者に対して、以下を推奨しています。

  • 1時間の連続作業ごとに10〜15分の小休止
  • ディスプレイから40cm以上目を離す
  • 定期的なストレッチと目の休憩

なぜ在宅ワークは疲れやすいのか?

在宅ワークが疲れやすい理由は、以下の4つが挙げられます。

理由1:通勤という「切り替えの時間」がない

オフィス勤務では、通勤時間が無意識に「仕事モード」と「プライベートモード」の切り替えになっていました。在宅ワークではこの境界が曖昧になり、心身の緊張が続きやすくなります。

理由2:作業環境が整っていない

オフィスのように人間工学に基づいた椅子やデスクがなく、ダイニングテーブルやソファで仕事をする人も。姿勢が悪くなり、肩こりや腰痛の原因に。

理由3:運動不足

通勤がなくなり、会議室への移動もないため、1日の歩数が激減。血行不良により疲労物質が蓄積しやすくなります。

理由4:孤独感・コミュニケーション不足

対面のコミュニケーションが減り、孤独感やストレスを感じやすくなります。特に一人暮らしの方は、1日中誰とも話さない日も。

これらの課題に対して、アロマテラピーは科学的に効果が実証されている対策の一つです。次のセクションで、その根拠をご紹介します。

2. なぜアロマがストレス解消に効果的なのか?

香りが脳に直接作用するメカニズム

香りの分子は、鼻から吸い込まれると大脳辺縁系(感情や記憶を司る脳の部位)に直接届きます。この経路は、視覚や聴覚と異なり、理性を司る大脳新皮質を経由しないため、即座に感情や自律神経に影響を与えます。

香りが働きかける脳の部位

  • 大脳辺縁系:感情、記憶、本能を司る
  • 視床下部:自律神経やホルモンバランスを調整
  • 扁桃体:不安やストレスの反応を制御

このため、「いい香りだな」と感じる前に、すでに心身がリラックス・リフレッシュし始めているのです。

科学的研究が証明するアロマの効果

アロマテラピーの効果は、多くの科学的研究で実証されています。

【研究1】筑波大学の最新研究(2025年)

筑波大学の水上勝義教授らの研究チームが、テレワーク就業者30名を対象に精油を用いた芳香浴の効果を検証しました。

研究結果

  • 芳香浴開始10分後に、気分の活性度・安定度・快適度が有意に上昇
  • 4週間の継続使用で、プレゼンティーイズム(健康問題による生産性低下)が有意に低下
  • 仕事のパフォーマンス向上に有用である可能性が示された

出典:『アロマテラピー学雑誌』2025年2月号

【研究2】日本アロマ環境協会(AEAJ)の研究

日本アロマ環境協会の複数の研究では、以下の効果が確認されています。

  • ユズ精油:香りをかいだ後にストレスが減少し、「緊張」「落ち込み」「怒り」「混乱」の指標が改善
  • ラベンダー精油:α波(リラックスの指標)が上昇
  • レモン・ペパーミント:無臭時よりも集中力が高まる

【研究3】ローズマリーと記憶力の関係

複数の研究で、ローズマリー精油を吸入した被験者が記憶課題で成績向上を示したことが報告されています。資料作成やプレゼン準備など、記憶力が求められる作業に適しています。

アロマテラピーの3つの効果

科学的研究から、アロマテラピーには以下の3つの効果があることがわかっています。

効果 作用 適した精油
リフレッシュ効果 気分転換、眠気覚まし、疲労回復 ペパーミント、レモン、ユーカリ
集中力向上 注意力・記憶力アップ、思考をクリアに ローズマリー、レモン、ペパーミント
リラックス効果 ストレス軽減、緊張緩和、心の安定 ラベンダー、ベルガモット、オレンジ

3. 在宅ワークにおすすめのアロマ7選

ここでは、科学的研究に基づき、在宅ワーク・デスクワークに特におすすめの精油を7つご紹介します。

【集中力アップ】ペパーミント

効果・特徴

  • 意識を覚醒させる作用があり、眠気覚ましに効果的
  • 不安やイライラを静め、思考をシャープにする
  • 科学的研究で、無臭時よりも集中力が高まることが確認
  • 清涼感のある香りは、全身を刺激し疲労回復時にも活躍

おすすめのシーン:午後の眠気覚まし、長時間の会議前、資料作成時

【気分転換】レモン

効果・特徴

  • 心理的に気持ちを明るくしてくれる効果
  • ノルアドレナリンの分泌を促し、注意力を高める
  • 気分が乗らない仕事に取り掛かるとき、気分転換との相乗効果を狙える
  • 誰からも好まれやすい柑橘系の香りで、オフィスでも使いやすい

おすすめのシーン:朝の作業開始時、気分が落ち込んでいる時、チームでの使用

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レモンを基調としたシトラスとハーブの香りが、在宅ワークの気分をリフレッシュ。

【記憶力向上】ローズマリー

効果・特徴

  • 集中力や記憶力を高めてくれる定番のアロマオイル
  • 研究では、ローズマリー精油を吸入した被験者が記憶課題で成績向上を示した
  • 清涼感のある香りはリフレッシュにも適している
  • 頭脳明晰作用により、仕事での集中が必要なときに推奨

おすすめのシーン:プレゼン資料作成、企画立案、新しいスキルの習得

【ストレス軽減】ベルガモット

効果・特徴

  • 柑橘系でありながらフローラルな甘さも持ち合わせる
  • リラックスとリフレッシュの両方の効果が期待できる
  • ストレス軽減や気分の安定に役立つ
  • 緊張の緩和にも効果的

おすすめのシーン:プレッシャーのかかる仕事の前、休憩時間、緊張をほぐしたい時

【万能】ラベンダー

効果・特徴

  • 万能精油」とも呼ばれ、リラックス効果、ストレス軽減、安眠効果が科学的に実証
  • α波(リラックスの指標)が上昇することが確認されている
  • 心身の緊張を和らげ、疲れた筋肉や心をほぐす
  • 夕方以降の使用で、仕事モードからプライベートモードへの切り替えをサポート

おすすめのシーン:仕事終わりのリラックスタイム、ストレスが溜まった時、就寝前

※詳しくは「睡眠の質を高める香りとは?」もご覧ください。

【リフレッシュ】オレンジスイート

効果・特徴

  • 誰からも好まれやすい柑橘系の香り
  • 強すぎない丸みを帯びた香りが特徴
  • 緊張をほぐしてリラックスした気持ちになる
  • イライラを収めたり、仕事への集中力を高めたりする働きも期待できる
  • オフィスでアロマを取り入れたいときに特に役立つ

おすすめのシーン:気分が落ち込んだ時、チームでの使用、午後の気分転換

【頭をクリアに】ユーカリ

効果・特徴

  • 気分を高揚させリフレッシュさせる効果
  • 呼吸器系の不調にも効くとされている
  • すっきりとした清涼感が頭をクリアにする
  • 集中力を高める

おすすめのシーン:頭がぼーっとする時、風邪気味の時、換気したい時

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森林浴をイメージしたユーカリとヒノキの香りが、在宅ワークの空間に自然の安らぎをお届けします。

4. 時間帯別アロマの使い方

在宅ワークでは、時間帯によって香りを使い分けることで、自然なリズムを作り出せます。

【朝 7:00〜9:00】集中力アップの香り

朝は1日の始まり。爽やかで覚醒効果のある香りで、頭をスッキリさせて仕事モードへ切り替えましょう。

おすすめの精油

  • ユーカリ:すっきりとした清涼感で目覚めをサポート
  • ローズマリー:集中力と記憶力を高める
  • ペパーミント:意識を覚醒させ、眠気を飛ばす

使い方のコツ:朝のメイクタイムや出勤準備中にディフューザーで部屋に広げると、すがすがしい気分で1日をスタートできます。

【午後 13:00〜15:00】気分転換の香り

午前中の疲れがたまり、集中力ややる気が下がってきた昼の時間帯。リフレッシュ効果のある香りで午後の仕事に備えましょう。

おすすめの精油

  • レモン:気持ちを明るくし、注意力を高める
  • グレープフルーツ:リフレッシュ効果で気分転換
  • オレンジスイート:緊張をほぐし、集中力を高める

使い方のコツ:お昼休みにユズの爽やかな香りでリフレッシュするのも効果的。厚生労働省のガイドラインでも推奨されている、1時間ごとの小休止時に活用しましょう。

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午後の気分転換に最適なシトラスとハーブの香り。デスクに置いておくだけで、自然なリフレッシュができます。

【夕方 17:00〜19:00】リラックスの香り

1日の仕事を終え、心を落ち着かせて眠りにつきたい夜の時間帯。安眠効果やリラックス効果のある香りに包まれましょう。

おすすめの精油

  • ラベンダー:安眠効果とリラックス効果が科学的に実証
  • ベルガモット:ストレス軽減と気分の安定
  • カモミール:心を落ち着かせる

使い方のコツ:ヒノキやスギ葉の精油は、心地よい夜のリラックスタイムを演出してくれます。在宅ワークの「仕事終了の合図」として、香りを切り替えるのも効果的です。

筑波大学推奨の使い分け

筑波大学の研究では、日中はローズマリー・シネオールまたはオレンジスイート、夜間は真正ラベンダーまたはベルガモットを嗜好に基づき選択して使用することで、気分やパフォーマンスの向上が確認されています。

5. デスクでのアロマ活用法

在宅ワークやオフィスで、アロマを効果的に取り入れる方法をご紹介します。

方法1:アロマワックスサシェ(最もおすすめ)

メリット

  • 火も電気も不要で安全
  • 置いておくだけで自然に香る
  • メンテナンス不要
  • 香りの持続期間は約2〜3ヶ月
  • インテリアとしても楽しめる

設置のコツ:デスクの端や、パソコンの横など、鼻より下の高さに置くと香りを感じやすくなります。

おすすめ商品

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※詳しくは「アロマワックスサシェとは?」もご覧ください。

方法2:USB型アロマディフューザー

メリット

  • パソコンのUSBポートに差し込んで使える
  • 小型のものは周囲に香りも拡散されにくい
  • 香りの強さを調整できる

注意点:オフィスで使う場合は、周囲への配慮として小型のものを選びましょう。

方法3:ティッシュ・コットンに垂らす(手軽)

やり方

  1. ティッシュやコットンに精油を1〜2滴垂らす
  2. デスクの端に置く
  3. 柔らかに香って影響する範囲も狭いので、自分のスペースで気軽に楽しめる

注意点:精油が直接木製の家具に触れないよう、お皿などの上に置きましょう。

方法4:マスクに数滴(個人で楽しむ)

メリット

  • 周りを気にせずに自分だけでアロマを楽しめる
  • マスクの外側に1滴垂らすだけ
  • オフィスでも使いやすい

注意点:肌に触れないよう、マスクの外側に垂らしてください。精油によっては刺激になる場合があります。

方法5:アロマストーン

メリット

  • 陶器や石膏でできたディフューザーにアロマオイルを垂らして使用
  • 熱を使用しないので香り方が優しい
  • オフィスにもおすすめ
  • 見た目もおしゃれで、インテリアとしても楽しめる

6. 注意点・よくある質問

オフィスや在宅ワークでアロマを使う際の注意点

⚠️ 周囲への配慮が最も重要

  • 香りの好みには個人差があり、同じ香りでも体調が優れないときは不快に感じることがある
  • アロマ自体が苦手な人もいるため、香りが広がりすぎないよう使用量に注意
  • マスクに垂らすなどして使い方に気を付ける
  • 一度にたくさん精油を出すのではなく、1滴ずつ垂らして香りが広がる様子を見ながら使用

仕事中に避けるべき香り

避けるべき香り

  • 強すぎる刺激的なアロマ:周りに不快感を与える可能性
  • 眠気を誘う香り:ラベンダーやカモミールなどの強いリラックス効果がある精油は、夜の就寝前には適していますが、日中の業務中に使用すると集中力が低下する可能性

朝に安眠効果の高いアロマを使っても逆効果。時間帯によって精油を使い分けることが重要です。

Q1. 1時間ごとの休憩時にどう使えばいい?

A. 厚生労働省のガイドラインでは、1時間ごとに10〜15分の小休止が推奨されています。

この休憩時間にアロマを活用することで、効果的なリフレッシュが可能です。筑波大学の研究では、芳香浴開始10分後には気分の活性度、安定度、快適度が有意に上昇することが科学的に証明されています。

休憩時間に立ち上がって軽くストレッチをしながら、深呼吸してアロマの香りを楽しむのがおすすめです。

Q2. オフィスでも使えますか?

A. 周囲への配慮があれば可能です。

小型のUSB式アロマディフューザーであれば、個人のデスク周り程度の範囲で利用できるので安心です。また、コンセント式のタイプを使う場合は、会社の電源を使用してもいいか上司に確認する必要があります。

アロマを使ってポプリやドライフラワーに香りをつけてデスクに置く場合には、必ず周囲の了解を得てから置きましょう。

Q3. アロマの香りが苦手な人への配慮は?

A. 個人的に香りを楽しむ方法を選びましょう。

香りに敏感な人や、病気などで香りを受けつけない人もいます。オフィスで香りを楽しむには、周囲への配慮が必須です。

個人的に香りを楽しむには、アロマスプレーをマスクやハンカチにかける方法があります。これにより、周囲に香りをできるだけ広めずに、自分だけで香りを楽しむことができます。

Q4. 4週間続けると効果が出ますか?

A. 筑波大学の研究では、4週間の継続使用でプレゼンティーイズムが有意に低下しました。

アロマテラピーは、即効性と継続効果の両方があります。まずは1週間試してみて、自分に合った香りや使い方を見つけることをおすすめします。

7. まとめ:在宅ワークに「香りのひとやすみ」を

在宅ワークやデスクワークの疲れは、多くの人が抱える現代の健康課題です。この記事では、科学的研究に基づいた、ストレス解消に効果的なアロマの選び方と実践的な使い方をご紹介しました。

この記事のポイント

  1. 在宅ワークの疲れは深刻:肩こり72.5%、ストレス78.2%、業務効率34.7%低下
  2. アロマは科学的に効果が実証:10分後に気分改善、4週間で生産性向上
  3. おすすめのアロマ7選:ペパーミント、レモン、ローズマリー、ベルガモット、ラベンダー、オレンジ、ユーカリ
  4. 時間帯別に使い分ける:朝は集中力アップ、昼は気分転換、夜はリラックス
  5. デスクでの活用法:アロマワックスサシェ、USBディフューザー、ティッシュ、マスク
  6. 周囲への配慮が大切:香りの好みは個人差があり、控えめな使用を心がける

在宅ワークの最大の課題は、「切り替えの時間」がないこと。アロマの香りを時間帯によって使い分けることで、自然なリズムを作り出し、心身の健康を保つことができます。

厚生労働省のガイドラインでも推奨されている、1時間ごとの小休止にアロマを取り入れることから始めてみませんか?

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